見なかった者が描く絵画――非目撃者による原爆の視覚的表象

日本社会文学会と原爆文学研究会が主催する大会のシンポジウムで発表します。

2010年度日本社会文学会秋季大会・第32回原爆文学研究会例会
日程: 10月2日(土)・3日(日)
場所: 広島大学東広島キャンパス 学士会館2階 レセプションホール
テーマ:原爆体験と表象/文学――過去からの呼びかけ、未来への語りなおし

10月3日(日)
――シンポジウム「原爆表象/文学と政治的リアリズム」――
基調報告:
松澤俊二「誰が「広島」を詠みうるか?」
加治屋健司「見なかった者が描く絵画――非目撃者による原爆の視覚的表象」
柳瀬善治「「知的概観的な時代」の「表現行為」について――三島由紀夫を視座として「加害」と「被害」を考える」
コメント:岩崎稔・加納実紀代
司会:深津謙一郎・水川敬章

大会の詳細については以下をご覧下さい。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/ajsl/meeting-next.html
http://scs.kyushu-u.ac.jp/~th/genbunken/goannai/32_1.pdf

大会の概要、シンポジウムの趣旨、発表等の要旨は以下をご覧下さい。
http://scs.kyushu-u.ac.jp/~th/genbunken/goannai/32_1.pdf

私の報告の要旨は以下の通りです。

見なかった者が描く絵画――非目撃者による原爆の視覚的表象
加治屋健司
原爆の視覚的表象は、それを目撃した者だけでなく、目撃していない者によっても生み出されてきた。本発表は、非目撃者による原爆の視覚的表象の意味を検討する。非目撃者による視覚的表象は、しばしば、実際の様子を伝えていない二次的なものと考えられてきた。しかし、視覚的表象とは、元来視覚的「再現」であり、目撃者によるものであっても、媒介性を免れることはできない。それに加えて、時の経過とともに非目撃者による表現が増加することを知る必要がある。本発表は、丸木位里・赤松俊子、鶴岡政男、山下菊二等の絵画から、その後の視覚文化の表現まで、非目撃者による原爆の視覚的表象の歴史を検討することによって、媒介的表現がもつ意味を考察する。最後に、直接の被害者でない者による視覚的表象の視点から、直接の加害者でない者の戦争責任について考えを進めたい。